おっ……と、すごい展開を持ってきたな最後に。そういう感じでした『ライオンの隠れ家』(TBS系)最終回前の第10話。
過剰に雄弁なドラマだなと思ってたんです。もうラス前なんで正直に言っちゃいますけど、こっちはヒロト(柳楽優弥)とASD青年・みっくん(坂東龍汰)の穏やかな日常にライオン(佐藤大空)という異分子が入り込み、引っかき回しながら徐々にみんなが少しずつ前に進んでいく、そういうものが見られれば満足だったわけです。とにかくみっくんはじめ3人の芝居がすごいし、食堂のおやじのでんでんもいいし、茨城の海沿いのロケーションもいいし、全然、そういう小さな世界でささやかに完結するドラマでよかったのに。
山梨における地場ゼネコンと政治家のリニア利権がからんだサスペンスパートとか、謎の白い男・X(岡山天音)とか、ちょっとノイズになってるぞと思ってたの。そういうカラーを出してくると、でんでんが映るたびに「ボディを透明にされちゃうぞ」(@『冷たい熱帯魚』)という邪念が頭をもたげてくるというか、取っ散らかってた印象があった。
ハナから、ささやかに完結するつもりなんかなかったんだな。振り返りましょう。
■万事解決した最終回、あれ?
離婚をほのめかして妻の愛生(尾野真千子)とライオンこと愁人を呼び戻した橘祥吾(向井理)。愛生をボコにした上で物置に監禁し、愁人を乗せてクルマを走らせていました。
行き先は、祥吾が幼少期を過ごした児童養護施設。すでに閉鎖されており、橘家の養子だった祥吾はいよいよ行き場をなくしてしまいました。
愁人と2人、湖を見下ろす高台でボンヤリしていると、駆け付けたヒロトに愁人を奪われてしまいます。
ヒロトがジャストなタイミングでこの場所を訪れることができたのは、みっくんが自立への第一歩としてグループホームのお泊り会に自ら参加したからでした。これまでの人生、ほとんどの時間をみっくんのお世話をすることに費やしてきたヒロト、それはみっくんを守っていたようで、実は気が付かないうちに縛っていたのかもしれない。愛情を勘違いしていたのかもしれない。そんなヒロトの告白に、祥吾も言葉を失ってしまいます。