以前、登場人物が言っていたことや行動が後になって「なかったこと」になったり、まったく別のことを言いだしたりで、自分の記憶力が逆に恨めしくなってしまうNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』も第53回。
今日も今日とて、「あれ?」と思っては過去をさかのぼり「やっぱりそうだったよな」「なんでそうなってるんだ?」の繰り返しとなりました。ついでに、ここのところ毎回言っている「真面目にやれよ」なシーンも出てきたね。
振り返りましょう。
■「食いすぎ」からの「食いすぎ」
まるで雰囲気ゼロの町中華でいきなり翔也(佐野勇斗)にプロポーズされてしまった結さん(橋本環奈)。雰囲気ゼロなのでプリプリしていますが、内心では大喜びの様子です。
大喜びなので、さっそく学校で、同じ班のみんなに報告。カスミン(平祐奈)は賛成してくれますが、若い男アレルギーのサッチン(山本舞香)は「絶対反対、あんたフラれたらどうすんの?」「男なんてそういう生き物やろ」などと唐突なことを言いだします。
「あんた、過去に何があったん?」と問いかけるカスミンに、サッチンは「別に」とか言ってます。
翔也が現れただけでおじさんの背中に隠れて目も合わせられなかったサッチン。あの時点で変だったけど、まあそういう人か、と思っていたら、過去に何かあったことが示唆される。つまりは、昔から目も合わせられないほど若い男が苦手だったわけじゃなく、何かがあってそうなったということです。このドラマが人物の一貫性に無頓着であることはすでに承知していますが、それでもサッチンの過去という時間軸に何か、重いものが宙に浮いた感じがするんですよね。
おそらく、意図としては結の前で結婚についての賛否両論が交わされ、加えて心ここにあらずなモリモリ(小手伸也)が描ければシーンとしての役割は達成しているんでしょうけれども、それにしてもセリフが場当たり的すぎるので「結婚に賛成」「結婚に反対」という記号を置く以上の意味が生まれてしまっている。こういう小さな違和感が、『おむすび』というドラマへの没入感を削いでいくわけです。