アラサー市役所ガールのほこ美ちゃん(奈緒)が、自分をコケにしたクズ男・海里(玉森裕太)を殴るためにボクシングを始め、やがてプロのリングにたどり着くまでを描いたドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)。

 主人公はあくまでほこ美ちゃんですが、描かれたのはひとりの妖艶なクズ男が真人間になるまでの失われた時間の回復の物語。玉森裕太のファンにとっては、いろんな玉森が見られる眼福な作品だったはずです。

 その一方で、クズ男がクズになった原因を「ボクシングで人を殺した」と表現し、競技中に起こった事故を「罪」「加害」として一面的に描いていたことに終始モヤモヤしつつ、最終回。振り返りましょう。

■それは控室でやれ

 海里くんがかつて“殺した”相手の平山大地(大東駿介)の弟・悟(倉悠貴)が仕組んだスパーリングでノックアウトされ、脳震盪を起こして入院中のほこ美ちゃん。足も捻挫しているし、家族にも心配をかけたし、せっかくプロテストに受かったけれどボクシングを続けるかどうか悩んでいます。

 一方、自分のせいで大好きなほこ美ちゃんが危ない目にあったことで、ハートブレイクな海里くんは、カメラマンの仕事も何もかもを放り出し、べそをかきながら夜の街をさまよっていました。公園でうずくまっていたところを拾ってくれた近所の町工場で、住み込みで働き始めています。

 死んだ目で、死んだような日々を過ごす海里くん。通りすがりのチンピラにボコられても、なんの感情もわきません。そんな海里くんの居場所を突き止めたほこ美ちゃんは、海里くんにもう一度立ち直ってもらうためにボクシングを続けることにします。1日でも早く試合をして、その姿を海里くんに撮ってもらいたい。ほこ美は練習に明け暮れながら、足しげく海里くんを訪ねては励まし続けるのでした。

 その姿に、徐々に勇気づけられていく海里くん。悟ともう一度向き合い、その思いを伝えます。

 そして迎えたほこ美のデビュー戦。海里くんはカメラを手に会場に向かって全力疾走していました。なんで遅刻しそうになってるのか、電車で行けばいいのにどうして徒歩(疾走)なのか、よくわかりませんが、とにかくエモーショナルに走っています。