「今の話だって嘘かもしんねえぞ?」
自虐的に笑う少年に、鹿乃子は即座に「嘘じゃないです」と断言してみせます。その鹿乃子の言葉は、少年の心にいたく響きます。鹿乃子が「嘘解き」であると知らない少年にとって、それは「あなたを信じる」という態度そのものでした。
そのころ、左右馬は町を訪れていた鹿乃子の母親・フミ(若村麻由美)と出会っていました。フミは鹿乃子の元気な姿を一目見るためにこの町にやってきましたが、会うつもりはないといいます。
この女性が鹿乃子の母親であることをすぐに察した左右馬は、のらりくらりと正体をぼかしながらフミを事務所に連れて帰ります。
フミは、鹿乃子と会うのが怖いと言います。また傷つけてしまうかもしれない。あの子は嘘がわかるから、私の言葉に嘘が混じっていたら見抜いてしまう。また傷つけてしまう。そう思い悩むフミを、左右馬は「嘘がわかるということは、本当がわかるということです」と諭し、再会を促すのでした。
村を出たとき、鹿乃子は母親に抱きしめられながらささやかれた「いつでも帰ってきていいんだよ」という言葉が嘘であったことを見抜いてしまい、二度と故郷には戻れないことを悟ります。以来、フミへの手紙にも住所を書かずにいましたが、ようやく左右馬の事務所という居場所を見つけ、「もう帰らなくても大丈夫だ」という思いに至って母親に住所を知らせていたのでした。
フミが鹿乃子に言った「いつでも帰ってきていいんだよ」という嘘の裏には、この村に帰ってきたらまたつらい思いをするから、という母の優しさがありました。
「私は鹿乃子が好き、大好き」
久しぶりに顔を合わせた母親の言葉に、ひとつも嘘は混じりませんでした。
■メリークリスマス!
そうして母を見送っていたとき、食堂「くら田」では鹿乃子のためのサプライズパーティーの準備が進んでいました。その準備中、不意に訪れてしまった鹿乃子に、食堂の女将・ヨシ江(磯山さやか)は嘘をつきます。にわかにショックを受ける鹿乃子でしたが、もうその嘘には何か事情があることを察することができます。