なんとなく、天然で言うタイプにも見えない。自分が武者だから、いずれ賢子を悲しませることになるかもしれないと突き放したのかもしれない。だから、賢子の幸せを願っている。それでも、自分の手の届かないところに行ってしまうのは寂しくて……と想像すると、これもまた切ない話だ。
◆大宰府で生まれ変わった隆家
大宰府でハツラツとしていたのは隆家だ。目の治療をし、回復して見えた世界は隆家の心を変えたらしい。
「内裏のような狭い世界で位を争っていたことが、くだらぬことであったと思うようになった」
父、兄、姉が権力争いの中で命を落としていったことを思うと、余計にそう感じるのかもしれない。1年の大河の物語の中で闇落ちしていく人物はたびたび見かけるけれど、隆家のように何か憑き物が落ちたような人だっているの決まっているのだ。
「仲間がいれば良い」と言った隆家は刀伊の入寇で大きな成果を挙げた。隆家がいたからこそ、被害を最小にとどめられたのかもしれない。それはきっと仲間がいたからこその成果だろう。
さて、「光る君へ」もあと残すところ2話だ。最後、まひろと道長の関係は決着がつくのか。
<文/ふくだりょうこ>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ