あと、職業についての解像度の低さもけっこうしんどいんだよな。

 社会人野球の選手として就職した翔也が力んじゃってコントロールが定まらなくなってる。それを相談すべきは素人の彼女じゃなくて指導者なんです。真剣に野球に取り組んでいると思えないし、本気でプロやメジャーリーガーを目指しているようには思えないし、会社側も高校を卒業したばかりの若者を預かるにしては無責任だし、「社会人野球の強豪」を描くにしては簡単にやりすぎてる。野球の世界ってこんなに厳しいんだ、と思わせるような描写がない。ここは取材してないのか、取材のやり方に問題があるのか、集めた情報の使い方が下手なのか。

 あと、総菜屋からパン屋に転業した商店街の人が「パン屋やるまでパンを焼いたことがなかった」と発言するくだりもありました。パンを焼いたことがないのに、銀行から融資が下りてパン屋を始めたという。過去には、震災後に銀行が融資を渋ったためにみんな苦労した、長年靴屋をやってたナベさん(緒形直人)も資金の問題で建て替えをしていないと言っていた。なのに、パン屋未経験の総菜屋には新規事業の融資が下りる。また世界線が2つになってる。

 こういうの、些細なツッコミでもなんでもないんです。物語を楽しむうえで、最低限クリアされていなければならないラインに穴が開いてる。ドラマとしての評価以前の問題なんです。

 過去は変えられない。5日目に来た人は、7日目に来た人にはなれない。なくなったはずのシャンプーは、そこに現れてはならない。そこを疑ったら、もう何を見て何を記憶していたらいいかわからない。

「そんなもん、書き換えればいいっぺ!」って翔也は言うかもしれないけどね、ダメです。ダメだよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)