埼玉県川越市の川越氷川神社にて、12月4日(水)にいも神事の「献芋式(けんうしき)」と「おいも展示ミニ市」が開催される。
川越市の名物として知られる「サツマイモ」の豊作と商売繁盛を祈る“いも神事”。会場では、各種さつまいも商品や生イモが奉納展示される。
「紅赤いもの日」にちなんだ“いも神事”
川越市といえば、江戸時代に川越城の城下町として栄え、その面影が残ることから「小江戸」とも呼ばれ続けてきた。現在でも、街の各所にかつての城下町の跡が残っており、歴史と現代を一体となって感じられるレトロな街並みが観光客にも人気高い。
江戸時代から受け継がれてきたもののなかには「サツマイモ」栽培もある。当時「川越イモ」といえば川越藩とそこに隣接する他領の村々で生産されるサツマモを指していた。
1700年代末の寛政時代には江戸で焼き芋が大ヒット。その理由は、庶民が手軽に食べることができる数少ない甘い食べ物であったことだという。そのため、近郊の村々ではこぞってサツマイモが栽培されたが、なかでも川越産のサツマイモは味がよく上級品とされていた。
とくに、ひと昔前まで「川越イモの代名詞」とも「サツマイモの女王」とも称されたのは、伝統品種「紅赤(べにあか)」。程よい甘みと栗のような風味、ホクホクとして粉雪のような舌ざわりが特徴で、天ぷらや栗きんとんの材料として好まれてきた。
「紅赤」は、「八つ房」の突然変異種で、1898年の発見から2018年で120年を迎えた。優良品種として普及し人気を博した同種は、一方で戦中・戦後に新しい品種に押されて年々生産量が減少してきた現状もある。この「紅赤」を保存継承していくために、現在では紅赤の商品づくりなどの取り組みが行われている。
そんな「紅赤」の伝統を守るため、川越地方では12月1日を「紅赤いもの日」と定めている。12月4日(水)に川越氷川神社にて開催する「献芋式」も、「紅赤いもの日」にちなんだ神事だ。例年、「紅赤」の長寿力にあやかり、来年の豊作と商売繁盛を祈願している。