震災から数日後、お腹を抱えて苦しむ女児が「便秘」だと判明した瞬間に大量のワカメを運び込んできたナベさんには、さすがに天を仰いでしまいました。どういう人なんだ、これ。

 おそらくは様々な被災者から取材で聞いたエピソードをナベさんに当てはめているんでしょうけれど、もともと震災前にアーケードに反対していたあたりから度を超えた偏屈者として描かれていたので、震災で娘が亡くなってどう変わったのかがよくわからないんですよね。それでも当初は、墓参りを断ったりしてたので「悲しくてブッ壊れた人」という解釈で見てきたんですが、ワカメ持ってきたり、やっぱりアーケード作りを率先して牽引したり、まるで「被災者行動パターン詰め合わせパック」みたいな状態になってしまっている。

 小説家の天童荒太が東日本大震災をテーマに『ムーンナイト・ダイバー』(文藝春秋)という作品を発表したときに話を聞いたことがあるんですが、天童さんは「小説を書くために人の話は聞かない」と言ってたんですよね。

「お話を一度二度聞いただけでその人のことをわかったと思うのは間違いだし、どれだけ深く付き合っても、本音の部分なんてなかなか話さないと思う」

「それを取材して、聞いて、語ったから、この町の人はこんなふうに思っていると書いたら、それはとんだ間違いになる」

 どうやってフィクションを作るかなんて人それぞれだけど、ナベさんというキャラクターの造形を見ていると、このドラマの被災者に対する取扱いというか、スタンスの残念さがあらわになってる感じがして、ちょっとさすがに悲しくなっちゃうんだよな。

 悲しいときー、ですよ、本当に。

(文=どらまっ子AKIちゃん)