次のジェームズ・ボンドが決まらない。スパイ映画「007シリーズ」は最も新しい『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)で25作品目となったが、6代目ボンドのダニエル・クレイグはこの作品でボンド役を去った。7代目ボンドが誰になるのか、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を撮影している最中から注目されてきたが、一向に決まる気配がない。公開から3年以上の歳月が過ぎ、世界中のボンドファンをヤキモキさせている。

 「007シリーズ」は1962年にスタートした。ボンド役は初代がショーン・コネリー、2代目がジョージ・レーゼンビー、3代目がロジャー・ムーア、4代目がティモシー・ダルトン、5代目がピアース・ブロスナン、6代目がダニエル・クレイグだ。

 ハードなスパイ映画でありながら、「女性好き」のボンドが女性で数々の失敗を犯すというところもシリーズの魅力でもある。しかし、「遊び心」が強すぎたとして、ダニエル・クレイグのボンドでは「遊び心」をなくしてハード路線を追求した。

 ダニエル・クレイグ自身、ニヒルな演技が特色の俳優で、にやけたボンドの顔は見られなかった。そんな「堅物ボンド」が5作続いたところでの主役交代は、シリーズの方向性を大きく変える「ターニングポイント」である。

 「堅物ボンド」のままで行くのか、柔らかめでエンターテインメント性の高い内容に戻すのか、映画の基本路線から決めなければならない。

 それだけではない。「007シリーズ」が生き残るために、根本的な見直しが必要な時でもある。中高年層が主な視聴者となっている「007シリーズ」が、この後も歴史を刻むためには、若年層や女性にも積極的に鑑賞してもらわねばならない。

 ハード路線かソフト路線かという議論を飛び越えた「新しいボンドのあり方」を確立しなければならない。

 そこで、これまでの「白人男性」にとらわれずボンドを女性や黒人、思い切り若返らせてZ世代にするなど、多様性の時代にマッチしたボンドの登場の可能性が指摘されている。