一番下の妹・メイ(畑芽育)がチャチャッとリョウのスマホを調べたところ、リョウはエリにブロックされていることがわかりました。ブロックされてたら、電話になんて出るわけありません。代わりにリツがエリに電話をかけると、相手は何も言いませんが、漏れ聞こえてきた防災無線から郊外の漁村にいるらしいことが判明します。

 リツに促される形で、2人ですぐさま漁村に向かうことにしたリョウ。その道中でも、リツはうっすらプロポーズめいたことを言ってきますが、とにかく混乱中のリョウに響くわけもありません。目的の漁村でバスを降りた2人はさっそく聞き込みを開始しますが、なしのつぶて。終バスを見送り、翌日も手がかりをつかめずあきらめようとしていたそのとき、リョウの目の前にエリが現れるのでした。

「見つかっちゃった……(てへ)」

 農作業用の日よけ帽を深くかぶり、小さな女の子の手を引いているエリ。女の子はエリを「ママ」と呼んでいるし、エリの胸にはもうひとり乳幼児が抱かれています。それは、リョウが想像もしていなかったエリの姿でした。

 そして「結婚しない同盟」の盟友だと思っていたリョウにとって、その姿は最悪の裏切りでもあるのでした。

 ずっと会いたかった人に、会えたことで失うものもある。そういうお話。

■想定読者を失うということ

 スティーブン・キングは、すべての小説を妻に向けて書いているといいます。リョウにとって、妹のエリは自分の作品を真っ先に読ませたい相手でした。エリがおもしろいと思うものを書きたい。それがリョウの創作における価値観のすべてだったし、だからこそエリとの楽しかった会話をトレースした例のスピンオフドラマをエリに見てほしかった。

 おそらく、エリはそれを見たのでしょう。そして、リョウがまだ自分に向けて作品を作っていることを知り、ブロックしたのです。