第8週第36回から舞台は、糸島から神戸に移る。聖人が床屋を営んでいたこの神戸編でもひたすら北村有起哉尽くしで、本作を楽しめる。床屋の上階に引っ越してきた場面でも、糸島と変わりなく、いや仏頂面がどんどん豊かになっている。
ドラマ展開とともに、仏頂面の表情に微細な変化をつける北村有起哉レパートリー。存在すべてが豊かな俳優だ。商店街を盛り上げたいと奮起する聖人の名場面が、さらっと置かれてしまうのもさすがとしか。
米田一家が糸島に移り住むときにわだかまりを残してきた渡辺孝雄(緒方直人)の靴店前を通りがかる第37回の夜の場面。カメラは暗い店内に置かれている。ドアのガラス枠に縁取られた聖人が写される。枠にちょうど立ちどまり、おさまるタイミング、店内をのぞく演技といい、ほんと映画っぽい間合いなんだよなぁ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu