冬月の同僚であり、ずっと冬月のことが好きだったリサ(さとうほなみ)。ようやくその思いを伝えたもののこちらも報われませんが、そういえば事態の発端にこいつも一枚噛んでたんだよな。アフリカで冬月が「日本に大切な人がいる」とか言ってた直後にテロに遭って、現地の人にウソをついて冬月を死んだことにしてた。リサがあのとき「死んだのは冬月じゃなくて下原です」とちゃんと伝えていれば「冬月死亡」のニュースが日本に届くことはなかったし、ミワさんはヒロキと離婚して栞ちゃん(じゃない別の名前の赤ちゃん)と2人で冬月の帰国を待っていればよかったわけだ。

 ヒロキとミワ、冬月、マコト、リサ。これだけの地獄絵図を描くのに、たった5人しか使ってないんですよね。実に見事な配置だと思います。それぞれの行動が絶妙なタイミングで行われたことにより、それぞれに致命的なダメージを与えている。

 しかも、それぞれの行動原理に嫌悪感や不快感はあっても、矛盾はない。みんなが平等に痛めつけられて、血を流している。それぞれの痛みと、誰かを痛めつけようという邪気が伝わってくる。

 早い話が、人間が描けているということです。人間が描けている上で、配置と設定に抜かりがない。

 冬月はまだ、栞ちゃんが自分の子であることを知りません。そして冬月の会社の存亡は、ヒロキの会社からの融資が下りるかどうかにかかっている。ここでも、互いに刃物を握り合っているわけです。

『わたしの宝物』というドラマはドロドロのぐちゃぐちゃに見えて、実に理知的に、冷酷なまでに正確に人物が配置されています。ホントはこんなガチモンの配置を作って罠にはめて衝突させて血を流させて、その金で飯を食ってるやつがいちばん怖いんだけど、作った側はマスターに正論を言わせて他人事みたいな顔をしてるんだよな。まったくもってずるいぜ(すごくほめてます)。

(文=どらまっ子AKIちゃん)