今年を締めくくるにふさわしい大作ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMAにて毎週木曜日23時から放送中)。ここまでタイ・バンコクを舞台に、国内撮影では考えられないド派手な演出がこれでもかと繰り出されているが、まだまだこんなものではない。第3話では、佐野玲於演じる三島を軸に、現地の刑務所の中で屈強な男たちが入り乱れる中、さまざまなサプライズが連発する。これらのシーンが生まれた裏でも「ヒリヒリする物語」が隠されていたのだ。本作の原作・監修を務めた作家の沖田臥竜氏が撮影秘話を明かす。
タイという地の利を活かした撮影
『インフォーマ』の続編をバンコクを舞台にしてやることが決まった時、セットアップの段階から欠かせないと考えていたのが現地の刑務所での撮影であった。
アンダーグラウンドの世界を舞台にしたクライムフィクションを成立させたければ、怠ってはならないのが話題性の追求。つまりはインパクトかつリアリティだ。刑務所という社会の外側は、非日常的でありながら確かに存在する。だからそこに関心や共感が生まれてくるのであって、現実離れし過ぎたものに誰も感情移入はできない。
しかし、それも物語の中にさまざまな人間模様があってこそだ。だからこそ私はどのような題材であっても、登場人物一人ひとりの人間味というものにこだわり続けている。
それは復讐心や野心なのかもしれないし、恨みなのかもしれない。平たくいえば、愛や恋といった生み出す人間の側面もあるだろう。映像に映り込むことがなくても、登場人物の数だけドラマがなければならないと思っている。
だからこそ私は常に耳を澄まし、感覚を研ぎ澄ませ、脳をフル回転させて、そのことばかりを考えている。それなのに不思議なことにあまり儲からないのだ。発狂しそうになるぞ……ウソである。
ただ、リアリティの追求が絶対的に正しいと言いたいのではない。ファンタジーであっても素晴らしい作品はいくらでもある。だが、『インフォーマ』という作品が持つ力強さとは、実際に起きている社会問題にフォーカスし、そこにリンクできることにあると考えている。