筆者も第1話を観た時は、あえてベタな恋愛ドラマをやるというコンセプトに乗りきれず、観ていて辛かった。だが、2話、3話と続けて観ると、脚本を担当する市東さやかの作家性が少しずつ表れており、不思議な面白さが生まれている。

 市東は昨年、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人で、『真夏のシンデレラ』が連続ドラマ初執筆となる。もともと月9は、坂元裕二や野島伸司といったヤングシナリオ大賞を受賞したデビューして間もない若手を脚本に抜擢することで、若い世代に向けたドラマを作ってきた。物語は荒削りでも、台詞やキャラクターに宿る若い感性こそが、月9の最大の魅力だった。

 近年は若手脚本家が起用される機会が減っていたが、2021年にヤングシナリオ大賞を受賞した生方美久が、単独で脚本を執筆したオリジナルドラマ『silent』が木曜劇場(フジテレビ系木曜10時枠)でヒットしたことをきっかけに、もう一度、若い脚本家にオリジナルドラマを書かせようという機運がフジテレビに生まれている。

 今回、市東が月9に抜擢された背景に、生方の成功があったことは間違いないだろう。だが、月9らしい夏の恋愛ドラマという企画が、市東の資質に合っているのかというと疑問が残る。