市東がヤングシナリオ大賞を受賞したデビュー作『瑠璃も玻璃も照らせば光る』は、ヤングケアラーの女子高生・木村ひかる(豊島花)が主人公の物語だ。本作は少女の内面を繊細なタッチで描いたシリアスな社会派青春ドラマといった趣で、月9の恋愛ドラマとは正反対である。このデビュー作を観た印象だと、企画と市東の相性があまり良くないように感じる。

 だが、話数が進むにつれて、バカンスを楽しむエリート御曹司の水島を中心とした男性グループと、日々の生活に追われていっぱいになっている夏海たち女性グループの間にある経済的な格差を描いた場面が増えてきており、デビュー作で見せた市東のカラーが強まってきている。

「半径3メートル以内の幸せ」が自分の目標で、家族、仕事、友達といった「大事なものが全部半径3メートル以内にある」と語る夏海は、今の生活に満足しているように見える。しかし、家族を支えるために一日中働いている夏海の立場は、デビュー作で描かれたヤングケアラーの主人公と重なる部分が多く、実は無理をしているのではないかとも感じる。

 キラキラとした恋愛ドラマの奥底に、現代の若者が直面している社会問題が見え隠れすることが本作の隠し味で、そこに市東の作家性が強く滲み出ている。

 月9ならではの恋愛ドラマという企画と、市東さやかの作家性には大きなズレがある。しかし、このズレが化学反応を起こし、新しい時代の恋愛ドラマを生み出すのではないかと楽しみにしている。