このシーンを、『ベビわる』ファンは生涯忘れることができないでしょう。泣いているちさとの顔をティッシュで拭ったまひろは、こう宣誓します。
「ちさとを泣かす奴は、私がぶっ殺してやるから。私、殺せるよ。協会の人間だろうと誰だろうと、殺せるよ。やっと分かったんだ。なんで私がこの仕事しているのか。ずっと考えてた。社会になじめないから、人とコミュニケーションすることができないから。それもあるけど、違う。私のこの体は、この足は、この拳は、杉本ちさとを不幸にする人間を、ちさとを泣かす人間を倒すためにあるんだよ。だから、杉本ちさとを不幸にするすべてを私はぶっ倒す。それが私の生きる意味だって、今やっと分かった」
これはもう、永遠の愛を誓う言葉といっていいでしょう。2人は軽くハグしただけで、それ以上のセクシャルな描写はありませんが、杉本ちさとは深川まひろと究極の愛で結ばれたことになります。ここに至高のシスターフッドドラマが完成しました。
鬼神と化したちさとの殺戮シーン
生と死を共に分かち合うことを約束したちさまひは、営業部のボスである山下部長と対決します。女ふたりでのカチコミです。浮世の垢を洗い流すコインランドリーが、死闘の場となります。
久しぶりの休日を過ごしていた山下を銃撃するちさまひですが、山下も隙がなく防弾チョッキを着込んでいました。ちさまひは格闘戦に切り替えますが、体格とパワーで圧倒する山下に苦戦。ちさとは顔面を殴打され、片目を負傷します。それでも、ちさまひ得意の連携プレイを駆使し、洗い立ての洗濯物やシーツを凶器にして、山下を仕留めます。園村健介アクション監督の見事な演出でした。
続いて、ちさとはボスのいない営業部を襲撃します。このシーン、筒井康隆の短編小説『死にかた』を思わせるものがありました。まさに鬼神と化したちさとは、パワハラ天国だった営業部のスタッフ全員をいっきに血祭りにします。