作品における「女同士の友情」に定義や一定の価値観がないのが、すんごく気持ち悪いんです。この見送りのシーンに女の子がひとりも来ていないこと、女友達との別れを描かなかったことで、改めてそんなことを感じました。

 まあ、それはそれとして一家は神戸へ。結ちゃんは立て直された実家を見て震災を思い出し、表情をなくしてしまいますが、ガヤガヤと湧いて出てきた神戸のみなさんの賑やかな歓迎によって、なんとか持ち直したご様子。彼氏のカッパも電車で30~40分の大阪にいますし、新生活が始まりますということで、次回へ。

■全然、糸島が名残惜しくない

 電車に乗って糸島を去る結ちゃんは「さよなら糸島」なんてセンチメンタルな表情を浮かべていましたが、どうにも共感できないんですよね。

 私たちが見ていた糸島での結ちゃんは、何をやっても全然楽しそうじゃなかった。ハギャレンに参加することになっても活動はだいたい糸島じゃなく都会の天神だったし、糸島時代の2大エピソードであるフェスとカッパへの告白も、どこにでもある浜辺と神社だったし、あとは駅と自宅の往復だけだし、ようやく結ちゃんが「(糸島での)生活を楽しもう、やりたいことやろう」と決意した瞬間に2年間のタイムリープが発生したし、見る側として糸島という土地と物語がまったくリンクしてないんです。だから、全然名残惜しくない。引っ越しシーンにカタルシスがない。

 だから、結ちゃんが糸島への土着を象徴した人物である陽太に「糸島に来てすぐ馴染めたのも、ずっと楽しく過ごせたのも、陽太のおかげやけん」なんてしおらしく語ってみても、「ウソつくな」って思っちゃうんだよな。

 少なくとも、全然、まったく、ずっと楽しくなかったと言い続けてきたのがこのドラマだったはずなんです。震災のトラウマによって「どうせ全部消えちゃう」という強迫観念があって、だから何も楽しめない。そういう人物だったとドラマが言っている。