実際、脚本家の仕事を始める前には「自分の理想のドラマを書きたい」という思いしかなかったリョウですが、大平かなえの弟子として現場に入ることによって「売れたい」「バズりたい」「上に認めさせたい」という、本来なら邪念ともいうべき願望が浮かんできている。いや、浮かんできているというより、そうした願望がリアリティをもって手の届く位置に来ているといったほうがいいでしょう。
自分の中にあるどのエゴを貫くか。仕事として創作を行っている創作者にとっては永遠のテーマだし、だからこそ根っこの部分だったリョウの「自分らしいドラマ」がAPさんにブッ刺さるシーンは感動的でした。
ひるがえって、じゃあこの『若草物語』というドラマはどこに刺さるんだろうという話になると、これ難しいよな、と感じる回でもあったんですよね。姉のメグ(仁村紗和)も妹のメイもあんまり素敵な恋愛はしてないし、創作に興味のない大部分の視聴者にとってリョウという女性は偏屈で跳ねっ返りで意固地なだけにしか映らないだろうし、実際SNSではメイちゃんを演じる畑芽育とそのお相手を演じる深田竜生の顔ファンくらいしかこのドラマに言及してないんだよな。
個人的には「ド天才が出てこない『ルックバック』」みたいな感じのものとして楽しんでいますし、今回のくどぅーのドルヲタ芝居も超楽しかったし、このままエゴを貫いてほしいと思います。確かに、刺さってるのでね。
(文=どらまっ子AKIちゃん)