このまま賢子と双寿丸は夫婦になるのか…と思ったが、双寿丸は大宰府に行くことが決まった、と告げる。
賢子としては、もう恋人のようなものだと思っていたのかもしれない。自分もついていく、と言うが、女は足手まといになると断られてしまう。
「都でよい婿を取って幸せに暮らせ」「妹のようなお前と過ごすのも楽しかった」
好きな人にこう言われてしまっては……。
もしかしたら、双寿丸は賢子を拒むためにあえてこういう言い方をしたのかもしれない。
ただ、賢子も泣いてすがるタイプでもないし、怒るタイプでもない。笑顔で送り出したい、という気持ちが勝つ。
カッとなるところもあるけれど、好きな人の幸せを祈り、自分の思いも曲げない。両親によく似た娘である。
まひろと再びの約束を交わした道長は強い。政治のトップへと昇り、その地位を盤石なものにしていく。が、それと同時に老いてもいく。どのように老いていく姿を描かれるのか、終盤にかけてのポイントとなるのではないだろうか。
<文/ふくだりょう>
【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ