まひろは自分との約束など忘れてくれ、というが、道長にとってそれが生きる道しるべ。約束を忘れれば、自分の命も終わると言う。
その言葉を聞いてまひろは迷いなく「ならば、私も一緒に参ります」と答える。
夫婦になれなくても、共に逝くのだとしたら、それはそれでひとつの愛か、と一瞬、思ってしまう。
しかし、道長は「俺より先に死ぬな」と言う。そしてまひろは当然こう返す「ならば、道長さまも生きてくださいませ」
道長が生きるために必要だったのは、まひろとの約束なのだ。
◆目指す世を改めて問い直す
回復した道長は、臥せる前と変わらず、仕事に取り組む。これまでよりも苛烈かもしれない。
自分の孫を帝に就かせることを諦めてはいない。
そんな道長の背中を押すかのように、運が味方をする。内裏ではたびたび火事が起こる。これを道長は三条天皇の政に対する天の怒りだと言い、譲位を迫る。もちろん、三条天皇は頷かないが、実は次第に目と耳が悪くなっていた。道長らが言ったことを聞き返す、文も逆にして見ていたり。道長にとっては好都合と言えるだろう。
もちろん、そんな道長の行動をよしとしない者もいる。彰子(見上愛)も眉をひそめる。実資(秋山竜次)にも譲位を迫っていることを諫められる。
道長が目指すのは「民が幸せに暮らせる世を作ること」と言うが、実資は「幸せなどという曖昧なものを追い求めるのが私たちの仕事ではありませぬ」とぴしゃり。
確かに、実資の言うとおりで……。幸せは人によってさまざまで、権力者が「これが民の幸せ」と決めつけるのも乱暴だ。と、なると、道長の目指していたものは?
道長が目指す世、というのは結局のところはまひろと道長の心の中だけにある桃源郷なのかもしれない。
◆初恋、破れて
一方、賢子(南沙良)は双寿丸(伊藤健太郎)との交流を深めていた。当たり前のように屋敷にやってきて食事を摂っていく。越後から帰ってきた為時とも顔を合わせた。