結果はもちろん「否」でした。栞ちゃんのハーフバースデーまでは自我を保っていたヒロキでしたが、家族3人での写真を撮ろうとしたところでついに決壊、泣き出してしまいます。

 翌朝、ミワさんが目を覚ます前に、ヒロキは栞ちゃんをチャイルドシートに乗せて、海に向かって車を走らせるのでした。

■それは、因縁のない復讐

 神崎家の何もかもをブチ壊したマコト。彼女はシングルマザーで、夫の浮気が原因で離婚した過去がありました。それでもがんばって働きながら子育てをして、自分の手で雑貨店を開くところまで来た。

 そんなマコトが子なし裕福専業主婦のミワさんと親友でいられたのは、「自分は母親をやっている」という優越感があったからに違いありません。しかし、ミワさんが子を産み、何もかもを手に入れてしまった。母親になったミワさんにマコトが「親友だから」「親友だよ」とわざわざ言葉にして何度も言っていたのは、親友ではなくなり始めていることを自覚していたからでしょう。

 そして何もかも手にしたミワさんがさらにイケメンと不倫していることを知り、復讐を決意したわけです。なんの因縁もない者たちを襲う、ただ個人的な復讐ほど恐ろしいものはありません。神崎家にとって、マコトはJOKERそのものです。でも、JOKERだってJOKERになりたくてなったわけじゃない。

 このドラマを見ていると、何度も、何度も「ヤバいことになったな、でも自業自得だもんな」と思わされます。しかも、「自業自得といっても、あの状況だったらしょうがないよな」も付いてくる。

 登場人物の感情と行動に矛盾がないんですよね。これだけグチャグチャの状況になっても、誰の行動にも「まあ、しょうがないか。自分でもそうするかも」という理解が生じている。だから、ミワさんと冬月のハグをマコトが目撃していたり、冬月が仕事先でヒロキと出会ったり、そういうご都合主義の偶然があんまり気にならない。簡単にやっているように見えて、すごく難解な作劇が行われているし、それが成功していると感じます。