これらの情報をここで開示することで、最初のほうの「普通におもしろかったミステリー」にあったアンチオカルトな空気をパタパタと反転させていくわけですが、それにしても違和感の残し方が絶妙だったなと思うんです。それぞれ気持ちよく解決していたかのように見えた事件に、もうひとつずつ奥行きが与えられる。すべてが神様の思し召しだったことがわかってくる。そして、第1話で残されていた「トリックじゃないほう」の神隠しで死んだ5人に残されていた謎も、実は人間に宿った神様が人間の身体ごと消されていた、つまりは、ヒルコによるホンモノの「神隠し」だったことが明らかになる。そうして、ヒルコ対神様という構図が鮮やかに浮かび上がる。
前回から今回の冒頭への流れは、本当にお見事だったと思います。明らかにヘンテコなことをやってるのに、むちゃくちゃ説得力を持ってファンタジーに転化してる。
■人間ドラマもちゃんとやる
もともとこのドラマはオカルト/アンチオカルトというジャンル以前に、人間ドラマとしても犯罪者や事件関係者の苦悩や欲望の醜さ、愛ゆえの悲劇みたいなところを繊細に描いてきました。第4話まではそれを「トリックを暴く」という作業と並行して語ってきたわけですが、その人間ドラマの描き込みの深度はファンタジーとなった今回も変わりません。
美容インフルエンサーといういかにも現代的なモチーフに対して、「人魚の肉を食べると不老不死になる」という伝説をあてがい、実際に不老不死になった美容家を登場させて、不老不死ならではのステキなファンタジーが語られました。
90年前に「来世でもまた一緒になろう」と約束した神様と不老不死の女性が、今世でもまた会えた。神様は肉体が死んでも転生するから、また来世も会える。その話を聞かされた不老不死の美容家は、直後に記憶を消されることになる。
「構いません。それでも必ず、必ず、彼と出会ってみせます」
キャー、ステキ。