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2024/11/18
【映画レビュー『映画検閲』】表現の抑圧と感情の抑圧の果てに待ち受ける狂気・・・現実と幻想の境界線を揺らがせる映像表現が、観客の脳内をもかき乱す
抑えるべきか、解放すべきか…過剰な規制・抑圧の是非
犯罪や社会問題と、ポップカルチャー・芸術作品における表現の因果関係は、よく問題として取りざたされるが、結局のところ、“抑圧されすぎると人が狂うのか、規制がないと人が狂うのか”という疑問に明確な答えはなく、逆に“両方正しい”、“どちらにせよ個人差である”という部分はやはり大きく感じる。
今作においてもその答えが描かれているわけではなく、規制するために狂気的な表現を浴びすぎて主人公が狂ってしまったようにも解釈できるし、逆に表現と同じくらい自身の記憶や感情を抑圧しすぎて、気づけば芯の部分がおかしくなっていたというようにも受け取れる。
解釈はいくらでもしようがあるが、過剰な規制や、しょせん人間が引いたに過ぎない“正しさ”の線引きといった“検閲”をめぐる疑問・課題を考えながら、ホラー/スリラー演出を楽しめる映画として仕上がっていることは間違いない。
どこまでが現実なのかわからない、混沌の映像表現
ある特的の対象を観察し過ぎると何が正しかったのかわからなくなってくる、俗にいう“ゲシュタルト崩壊”のようなものが誘発されるように感じる今作、特に印象的なのは、現実的な景色にはそぐわない、異様に赤い照明と、時代背景も映した粗く淡いVHSクオリティの画質だ。
価値観が歪み、思い込みにすがり、目の前に広がる光景が現実なのか想像なのか映画なのかもわからなくなっていく主人公の戸惑いは観客にもシンクロし、映像内において現実と虚構の境界線は溶けてなくなってしまう。
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