◆最適役にして最適解を導く山下智久
そうなのである。現在38歳の山下は、ぼくらの想像を超えた存在になったのだ。彼の現在地点を探るのに最適なドキュメンタリー『挑戦者・山下智久』(Hulu)を見ただろうか。同作の山下を見て、往年の山Pファンである筆者は、感涙を抑えるのが大変だった。
例えば、ソウルの市場で食べ歩いたり、料理屋で新鮮な活きダコと格闘する山下が、あんなにもさりげない笑顔を見せるようになるとは。昔のバラエティ出演時などでは到底想像できなかった自然な笑顔。
『正直不動産』の永瀬役の笑顔からは、相当なコメディ、下手したら三枚目なキャラにも関わらず、難なく、いやむしろ喜んで演じていることが伝わる。
『挑戦者・山下智久』ではさらに、自作歌詞によるラップを吹き込むレコーディング姿が捉えられていたが、『正直不動産』では不当な値上げをしようとする大家にラップ的な節回しで本音をぶちまけるスカッとな場面もかなりの見せ場となった。
親友のために必死になって買い手を探すクライマックスでは、風速10メートルは軽く超えたと思われる突風が吹付ける。すると、瞬間風速的な名演をさらりと。どうやら、最適役にして最適解を導く山下智久が、ここに極まったようだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu