■それでも是非は問う
今回、ドラマが是非を問うたのはテレビ局側が演者の動向をGPSで追うことでした。こんなご時世なので、タレントのプライベートも管理したい。そんなの通る話じゃないのは当然ですが、ドラマは「マネジャーと本人の許可も取ってる」と言います。「許可も取ってる」と言っちゃえば、視聴者は飲み込むしかない。そういう雑な段取りで、雑な問いかけが行われました。
プロデューサーになった渚さん(仲里依紗)は、八嶋智人(本人)が不倫していて、変態プレイをしていると決めつけています。これも、えらい唐突な話でした。土曜午後の生放送のあと、八嶋は自宅と逆方向にタクシーを走らせている。これをGPSで追うと、どうやらスカイツリーの周辺でジョギングをしているようだ。エナジードリンクを飲んで、スクワットもしている。
現場にディレクターを飛ばして八嶋を隠し撮りしたところ、ラブホテルの前でたたずんでいる写真が撮れた。
だが、実際には八嶋はホテルに出入りしていたのではなく、その隣のけん玉カフェでけん玉の特訓をしていた。
何それ。ラブホの前にいる八嶋は確認したのに、けん玉カフェに入るところは見てないの?
もうほんとにこの場面は、「令和に何か言え」という制作側のオーダーをこなすだけの処理の時間です。GPSで演者を追わせることの是非なんてまったく考えるつもりもない、視聴者に考えさせるつもりもない、手抜きの時間です。
ただただ、脚本家と制作側が一枚岩じゃない感じがめちゃくちゃ伝わってきて気持ち悪いんだよな、こういうの。確かに時代のギャップを描くことで大きな話題になっているドラマではあるけれど、前回のインティマシーコーディネーターのエピソードなんかで全然その姿勢が真摯じゃないこともバレ始めてるし、そもそものコンセプトがドラマのノイズになり始めている。