◆恋人に殴られ「ものすごくうれしくなった」
慰め、励ましてくれた同期の彼とつきあうようになったが、彼女はどうやってつきあったらいいかもわからなかった。彼の言いなりになりながらつきあって半年ほどたったところで、イラついた彼に、彼の家で殴られた。
「そのとき、私、ものすごくうれしくなったんです。ああ、彼は私に本気なんだって。今思えばおかしいのはわかる。でもあのときは、そうやって深く濃く関わってくれるのが愛情なんだと思い込んでいた」
最初は数ヶ月に1度だった暴力が、月に1度になり、週に1度になった。それでも彼女は、愛が深くなっていくと信じていたという。
◆殴るのは愛情ではないと、ようやくわかった
「あるとき、私たちのことが社内で噂になって、彼が『ミサトとつきあってるの?』とみんなの前で聞かれたんです。彼はつきあってるわけないじゃん、こんな鈍くさい女とって言った。照れてるのかなと思って彼を見たら、憎悪のまなざしで私を睨んでいた。私、そのまま倒れてしまったんですよ、社内で」
それが24歳のときだった。会社の医務室に親切な女性ドクターがいて、精神科医を紹介してくれた。彼女は会社を辞め、アルバイトをしながら治療を優先させた。
「殴るのは愛情ではないということが、ようやくわかったのはそれから数年たってからですね。本当に吹っ切れたとは今でも言えないかもしれないけど、30歳くらいでようやく落ち着きました」