◆「私も虐待を受けて育ちました」33歳女性の実話
幼いころ、虐待を受けていた人はたとえ精神的な病にならなかったとしても、どこかがいびつになってしまうことが多いのかもしれない。
「私は父と兄から暴力を受けていました」
そう話すのは、ミサトさん(仮名・33歳)だ。小学校2年のとき、母が家から出て行った。
「行かないでと母に泣いてすがったけど、『ごめんね』と母は泣いて私を振り切った。『必ず迎えに来るから』と言ったくせに来てくれなかった」
それからは父親と3歳年上の兄との3人暮らしとなった。父はパンや餅などは買っておいてくれたから、それを食べて学校へ行った。いくらかお金は置いてあったが、兄は自分の夕飯をそれで買って、ミサトさんに何か食べさせようとはしなかった。
そのうち、父親のストレスが増していったのか、あるいは逃げた妻への怒りなのか、ミサトさんに八つ当たりするようになった。
◆幼い少女が、父と兄に殴られながら生活していた
「お腹がすいたと言ったら、父からビンタが飛んできてびっくりしたことがあります。それを見ていた兄も、私を殴るようになった。今思えば、ふたりのストレスのはけ口になっていた。兄は兄で、母親が急にいなくなったことを友だちに指摘されてつらい思いをしていたようです」
とはいえ幼い少女を、父と兄が殴りつけながら生活するのは異常である。親戚や近所の人など、誰か気づかなかったのだろうか。
「ふたりとも洋服で隠れているところを殴るから、誰にもわからない。夏のプールは、父が入らないでいいと水着も買ってくれなかったから入れなかった。学校からの呼び出しには父が応じていました。『母親がいないから、娘の性格が変わってしまって』と先生に言っていたようです。一方で兄もクラスで浮きまくっていたらしいので、父はそれにも対応はしていた。そうやってストレスがかかると私への暴力がまたひどくなる」