◆中学生になり、遠い親戚のもとで暮らせるように
小学校高学年になると、ミサトさんは料理をするようになった。父も兄も、ミサトさんの作る料理を食べているくせに彼女に暴力をふるった。中学に入学したあと、彼女は母の妹である叔母の家に逃げた。叔母は彼女を抱きしめてくれたが、「うちに置くわけにはいかないの、ごめんね」と別の親戚の元へ連れて行ったという。
親戚をたらい回しにされ、やっと落ち着いたのは母の従姉妹のさらに親戚の……と、遠い親戚のもとだった。
「もうどんな続柄かもわからないくらい遠いんだけど、その家には子どもがいなかった。だから置いてもらえました。家事は全部やらされたけど、殴らない人がいるんだというのが新鮮だった」
高校にも進学できた。彼女は非常に優秀だったので、大学にも進んだ。大学2年になったとき、遠い親戚の家を出た。
◆会社の上司の怒鳴り声で、体が固まってしまう
「初めてといってもいいくらい親しくなった女友だちの家に泊めてもらうことになりました。暴力のことは言えなかったけど、過去を少し話したら、彼女の両親がいたく同情してくれて。お父さんが不動産会社を経営しているので、会社がもっているアパートを使っていいよと言ってくれたんです」
勉強最優先でアルバイトにも精を出し、自力で生活した。優秀な成績で大学を卒業し、就職した。そこまではなんとかがんばり通せたという。
「就職した会社の上司がけっこうワンマンな人で、ときどき怒鳴るんですよ。その怒鳴り声で、私は体が固まってしまう。社会人になってから、一気に過去のトラウマが噴きだしてきたんです」