◆カロリー制限が沼の入口

当時は21世紀を迎えたばかり。まだ日本ではヴィーガンが一般的ではなかったこともあり、基本はソロ活。「ひとりでも戦って、社会を変えていく」という使命感に満ちていたという。

しかし現在のいるみるくさんは、肉も魚も口にするという、ごく標準的な食生活を楽しんでいる。どのようにヴィーガンという沼にハマり、そして出てきたのか。今回はその体験を聞いていこう。

いるみるくさんが食生活を変えた目的はダイエットだった。

「18歳のときです。ぽっちゃり体型を変えようと思い、摂取カロリーを抑えることを始めました。1日1500kcalに調整して順調に体重が落ちていったものの、次第にダイエットの定番である停滞期にぶつかります」

◆無茶なダイエットが加速する

「そこから1日1200~900kcalくらいにまで減らし、そうなるとこんにゃくと野菜くらいしか食べてませんでしたね。肉や魚、乳製品はカロリーが高いという理由から、口にしませんでした」

1日に必要なエネルギー量の目安は、18歳女性の場合はだいたい2000kcalとされている(身体活動レベル普通の場合)ので、900kcalはかなりハードだ。長期間つづければ心身ともに負担がかかり、やせてもリバウンドの可能性は高い。

極端なダイエットは健康を害するという指摘は当時すでに多々あったものの、ネットがそれほど発達していない時代だったので、いま以上に無茶をする女性は多かっただろう。

筆者もいるみるくさんとだいたい同年代なので、こうした話を聞くと、学生時代に無茶なダイエットをしていた同級生たちを思い出してしまう。

「そうしているうちに、カロリーを摂るのが怖いという感覚になって、食べ吐きです。私の場合は、ものを食べたら15分が吐き戻すタイムリミット。それ以上経過すると食べたものが下へ移動してしまって吐けなくなる。低カロリーであることに加え、とろみのあるものとか、吐くことを前提に食べるものを選んでましたね。それが20歳くらいまでつづきました」

ここでいるみるくさんが話す「食べ吐き」とは、指で喉を刺激したりしてみずから嘔吐を誘発すること。一般的には「過食嘔吐」が広く知られ、摂食障害を引き起こす危険な行為だ。