◆子育ての「負の遺産」を断ち切りたい人へ

ーー「虐待の連鎖」や、自分の子育てに悩んでいる人にどんなことを伝えたいですか?

あらい:「虐待の連鎖」を自分の代で断ち切る決意を持つことは大事なことですが、自分は果てしないことをしようとしていると自覚することも大切だと思います。自分が赤ちゃんの頃から親にされてきたこと、その積み重ねを組み立て直すのはものすごく大変なことなんです。加えて、子どもとの他愛のないやり取りの中で、自分の嫉妬心や虐待の記憶など、多くのものとも戦わなければいけません。

 虐待されてきた中で「普通」を目指していると、知らないうちに「完璧」を目指すようになってしまっているのではないかと思います。そうして頑張りすぎると失敗するし、焦っていると自分に染みついたものを繰り返してしまいます。全部一気にやろうとすれば誰でも破綻してしまいます。

ーー行き詰まりそうになったときは、どうすればいいと思いますか?

あらい:抽象的な言い方になりますが、自分に優しくすることが大切だと思います。まずは休んで体力・気力を取り戻してから、楽しいことをしたり、一人になって自分に戻る時間を持つ努力をしたほうがいいと思います。そうして、自分と向き合う準備・実行することで、自分の家族にも目を向ける意識が持てるようになると思っています。

 自分と向き合うということは、過去と向き合うことになりますが、当然初めのうちは昔されたことに対する怒りや復讐心が湧いてきます。その感情を手放すことはすごく悔しいと思いますが、でも「それは今の自分の家族にとって必要なものなのか?」と見つめ直して折り合いをつけるために必要な時間です。そうすることで、今まで見えなかった道が見えてくると私は思います。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。