◆家は自分が主人公になれるステージ
――おうちにいることも大好きだという高橋さんは、コロナ禍でも、食事やご近所づきあい、好きなものに囲まれた暮らしなど、生活を楽しんできたと著書『暮らしっく』に書かれています。同じように、忙しくて自分の暮らしに目を向けられなかった人もようやく暮らしに目をかけられるようになったのでは、と思います。
高橋:そうですね。コロナ禍は、思うようにライブや舞台に行けなくなった時期もありましたよね。そうなってはじめて、エンターテイメントや芸術に支えられていたんだなと気づきました。だから、その代わりとして、生活や家の中で楽しさや喜びを見出すことが増えたんじゃないかなぁと思います。
――普段の生活の中でエンターテイメントに近いことを見出している、逆境に負けないモチベーションが伝わってきます。
高橋:この長いコロナ禍で皆さん疲れたと思います。私もいろんなことに疲弊しましたが、それだけで時間ってどんどん過ぎていってしまうから、そのときにできる範囲で、自分を楽しませる方法を見出せると良いですよね。
苦しい状態でも少し視点を変えて、時間はたっぷりあるのだから、ニュースは消して料理をゆっくり味わって食べたり、野菜を育てたり、足湯をしたり、昔好きだった本をパラパラめくってみたり、レコードをかけてみたり。こういう細やかな時間の重なりが生活だと思うんです。
日常の中で自分にスポットライトが当たることってなかなかないですよね。でも、家では自分が主人公でいいと思うんです。「自分ってなにが好きだっけ?」「どんなことに興味があったっけ」と考えたり、工夫次第でステージはいくらでも輝きます。
『暮らしっく』を読んでくれた方が、「家の中も楽しいぞ!」と思ってもらえたら、そして、派手じゃないけど、こういう暮らしもなかなか良いものだよということを伝えられたら良いなと思います。