◆診断名を告げられて「安心した」理由
――本書では太郎くんが自閉スペクトラム症であることを書かれていますが、いつ頃それが分かったのでしょうか?
まゆんさん(以下、まゆん):3歳の時に主治医の先生にはっきりと診断名を告げられました。当時からずば抜けて活動的で「何かあるのかな」と思っていたのでショックはなく、理由が分かって安心しました。
それまでは子育てがすごくキツかったので「辛くて当たり前だったんだ」と納得しました。看護師として小児の発達相談を担当したことがあったので、「何だかそこに来る子たちに似ているな」と思っていたんです。私の母も「やっぱりね」という反応でした。
――いつ頃から「何かあるのかな」と思い始めたのでしょうか?
まゆん:最初は保育園側から指摘があって、「一度、保育園の様子を映しているモニターを見てみませんか?」と言われたんです。行ってみたら、教室から飛び出るわ、運動の時間じゃないのに園庭の滑り台に走り出すわで、ものすごく多動でした。「一度、医療機関に相談に行ってください」と言われて、元々通っていた小児科の先生に相談して、専門の医療機関に紹介してもらいました。その小児科の先生には本当に色々と相談に乗っていただいたので、環境に恵まれていたなと思います。
◆憎しみのような気持ちが湧いた日もあった
――昔は子育てが辛いと思っていることを自分で認められなかったと書かれていたのが印象的でした。
まゆん:子どもといると辛いとか、「うちの子なんやねん」という気持ちがあったんです。3歳くらいの頃の太郎は癇癪(かんしゃく)がすごくて「どうしてこんなに癇癪起こすの?」と腹が立つ日もありました。本当に憎しみのような気持ちが湧いてきて、「私ってなんて心の狭いお母さんなんだろう」と自分を責めたり「そんなことを思ったらいけない」という気持ちが強くありました。
でも小児科の先生に助言してもらって、「子どもに対して、好きな気持ちと嫌いな気持ちの両方があっても別にいいし、全部ひっくるめて好きだな」と思うようになって少し楽になりました。
――作品を読むと、いつも太郎くんに寄り添っていてすごいなと思うのですが、辛い時期があったんですね。
まゆん:小さい頃はそうでした。小1くらいから授業中はずっと座っていられたのですが、貧乏ゆすりをしたり、鉛筆や服や名札を噛んだりしていました。小3くらいから落ち着いてきたと思います。