◆当事者の子ども達に届けたい
――この作品をどんな方に読んでほしいですか?
水谷:現在進行形でヤングケアラーをしている子供達に読んでほしいと思います。いつか私の子供にも読んでほしくて、夫に「もし私が早くに亡くなったらこの本を読ませてね」と言っているんです。ヤングケアラーの方達の生きる知恵を盛り込んだ本にすることができたと思っています。
子供達に読んでもらうために全ての漢字に読み仮名を振っています。図書館でも取り扱ってもらっていて、利用者の方の予約を沢山いただいているようです。学校の図書室に置いてもらったりすることで子供達に届いてほしいです。
――子供達にとって多くの気づきがありそうですね。
水谷:あと、読者の方から「ヤングケアラーではなかったけど共感できる」という感想をいただいています。「親が離婚して、気を遣っていたけど本当は辛かったことを思い出した」という人や「両親が年に何回も激しい夫婦喧嘩をしていて、それを冷めた目で見ていた」という人もいました。虐待はないけど放置されていたり、鍵っ子だった、塾に行かされるのが嫌だったとか、子供の頃から大人の期待に合わせて生きてきた人にも当てはまるところがあるのかもしれません。親に対してモヤモヤした思いを抱えていたり、無気力で「自分がやりたいことが分からない」と感じている人にも読んでもらいたいと思っています。
(C)水谷緑/文藝春秋
<取材・文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。