◆成長したヤングケアラーの苦悩

――大人になってから、どうやって「自分がヤングケアラーだった」と気づくのでしょうか?

水谷緑さん(以下、水谷):ニュースなどで報道されているのを見て気づく方が多いと思います。ただ、当事者としては「ヤングケアラーという言葉自体に腹が立つ」と言う人もいました。「ケアしたくてしてるんじゃない!」と思うそうです。

――大人になった元ヤングケアラーは、どんな辛さを抱えているのでしょうか?

水谷:自殺願望がある方が多いです。また、自己肯定感が低いことがあります。自分の願望を押し殺して生きてきたので「自分がやりたいことは何か分からない」と感じています。責任感が強いので人に頼まれたことはやり遂げるけど、自分の欲しているものが分からないんです。でも一見すごく悩んでいる感じがしなくて、私から見ればにこやかで人当たりの良い方が多かったです。

あと、「周りの人に腹が立つ」と言う人もいました。自分は何もしてもらえなかったのに、「大学生の時に他の人が仕送りをもらっていることに怒っていた」という人がいました。

――恋愛ではどうなのでしょうか?

水谷:恋愛の悩みはあまり普通の人と変わらない気がしました。ただ、男性の方で「いつもどこか危うい女の子を好きになってしまう」と言っている方がいました。お母さんがうつ病だったので、似た雰囲気の人に惹かれるそうです。他にも「ダメンズを好きになる」という女性もいました。「必要とされている」と感じてしまうので面倒を見てあげたり、彼氏に「お店を出すから」と言われて資金を貸してしまったり「ついお世話しすぎてしまう」と言っていました。