その年、同じく『R-1』への出場権を失ったピン芸人・こがけんとのユニット「おいでやすこが」で『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の予選を駆け上がり、準優勝。予選では『R-1』に出られなくなったことを引き合いに出し「漫才しかなくなりました」というツカミを入れることで爆笑をさらった。

『M-1』での結果を受けて、小田は大ブレーク。21年の「ブレイクタレントランキング」(ニホンモニター調べ)では優勝したマヂカルラブリーとおいでやすこがは同率1位を獲得し、今やバラエティにドラマにと引っ張りだこ。正真正銘の売れっ子タレントとなった。

「言うたら、出る必要もない。出て何が変わるわけでもない」

 それは、小田の本音だろう。「『R-1』には夢がない」と言ったウエストランド・井口浩之の言葉ではないが、すでに夢を叶えたところにいる小田にとって、『R-1』に新たな夢を見ることはできないに違いない。

「けど『出ぇへん』って、気持ち悪いなと思って」

 話を聞いていた大谷が顔を上げる。大谷はすでに、出場への決意を固めている。