ところで「激写」で有名なカメラマンの篠山紀信が亡くなった。享年83。

 彼とはいろいろあった。私がFRIDAY編集長のとき、篠山のあるスキャンダルと引き換えに、当時、人気絶頂だった宮沢りえのグラビアを撮ってもらったことがあった。

 彼のスタジオでりえを撮るときに立ち会った。機関銃のように彼女に言葉を浴びせながら、彼女の表情を撮り続けていた姿に感動したものだった。

 私が週刊現代編集長のとき、篠山に毎号の表紙を撮ってくれないかと頼んだ。彼は週刊朝日で女子大生の表紙を撮り続け、話題になっていた。

 彼から、週刊朝日に了解を取ってくれないかと頼まれ、編集長に会いに行った。もちろん、週刊朝日の仕事は続けながらという腹積もりだったが、担当の編集者は泣いて怒った。

 結局、週刊朝日は辞めて現代をやってもらうことになった。その後、ポストも手掛けるようになり、毎週月曜日の現代とポストは篠山の表紙が並んだ。

 あらゆるジャンルの人物写真を撮り、常に新しい試みにチャレンジしていた。

 写真家としての評価はわからないが、あの時代と切り結び、時代を切り取って見せた手腕は、後々まで語り継がれていいはずである。

 彼の訃報を伝えたNHKニュースは、樋口可南子の写真集でヘアヌードという流行語を生み出したといったが、これは全くの間違い。

 樋口の写真集にヘアが出ていたのは確かだが、ヘアヌードという言葉ができたのはその後である。

 私が週刊現代編集長のときに「ヘア・ヌード」という言葉を生み出したのだ。NHKに抗議しようかと思ったが辞めた。

 また、思い出を語り合える人間がいなくなってしまった。