◆無意識的なマスキュリズム
流産をきっかけに夫婦関係が壊れた大輔と茜に対して、透と美咲には可愛い息子がいる。子どもを中心とした夫婦生活は、一見、幸せそうに思えてしまう。でも決定的だったのは、その子どもを産む直前。
美咲が子どもを産んでからも漫画を続ける意思を見せると、透は母として子育てに徹するべきだと言う。いや、自分は子育てしないの? まさか、美咲に任せっきりで、押しつけるために家庭に閉じ込めようというのか。
これは自分だけよければいいという無責任な最低夫の資質を超えている。ここには、根本的に女性を下だと認識しているマスキュリズム(男性至上主義)が根深く感じられるからだ。
無意識的だからなおさらだ。世界を見渡してみても2017年のトランプ政権以降、マスキュリニストの権利活動が活発になっている。
その意味でも、外ではいい風に見せているエセインテリ夫のマスキュリンな実像が、本作によって社会的な抹殺として暴かれることは望ましい。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu