◆引きずってきた思春期――父との葛藤を繊細に表現

ただの「不機嫌な娘」にならなかったことが、まず芦田の秀逸さが光ったポイント。娘としての“葛藤”を巧みに表現していました。口ではキツいことを言っていても、父のことが気になって仕方ない仕草や表情。父同様、音楽もバイオリンも嫌いになったはずなのに、楽譜を大切にしたり、想い余ってバイオリンを思いっきり演奏してしまったり。行動だけでなく、そこに戸惑いや隠されていた本音が感じ取れるのは、芦田の演技力があってこそ。

特に、3月10日放送の第9話は神回でした! 5年前、父との共演を目指して出場したコンクールでの追い込まれていた心境やプレッシャー。ファイナル手前で“奇跡”のような完成度の高い演奏ができた直後、父からのひと言で絶望したことなどが語られました。芦田の、父を尊敬して大好きだったからこそ、父と同じように音楽に向き合えない、自分の弱さと力不足に悩み押しつぶされた10代の繊細な心の揺れ――そして叫びは圧巻。15歳まで反抗期らしい反抗期もなく夢に破れた響が、5年ぶりに父と暮らすようになり、全力で父に甘える“反抗期”の娘として振舞っていたのだと腑に落ちます。

未熟だった自分を振り返り、ようやく父を許し、向き合おうとした前進した響。遅めの反抗期を終えた、晴れやかな笑顔は素晴らしかったです。