野崎は太田の緊急手配をするが、ひと足遅く、太田は証拠を隠滅して行方をくらましてしまった。しかし太田の自宅になぜか大量にあった落語のCDに目を付けた野崎。そのCDの中にはハッキングの記録が残されており、太田が、世界的にその存在が知られていた凄腕ハッカーのブルーウォーカーだったことが明らかに。だが、そこにはテロリストやバルカとの関わりの痕跡はなく、私利私欲で行動しないブルーウォーカーが日本のいち企業のシステム改ざんに協力するのも不自然。真犯人は別にいて、何か弱みを握られていたのではと野崎はにらむ。そして、その真犯人は国際テロ組織「テント」のモニター(協力者)である可能性が高く、すべてを知ってしまった太田がモニターに“消される”危険性も浮上した。

 警察の動きが真犯人に漏れていること、さらに2019年にバルカにいたことが判明したことから、乃木に協力していた同期の山本巧(迫田孝也)がモニターだと確信した野崎は、乃木を使って山本を罠にはめ、山本は太田の監禁場所に向かい始める。公安がその後を追って監禁場所を特定しようとするが、ここで計画が狂う。突然山本が姿を消したのだ。「俺もモニター」だという黒須(松阪桃李)によって山本は逃げのびることに。しかし、黒須の正体は、自衛隊の陰の諜報部隊「別班」だった。国外逃亡できると信じた山本は、浜松空港の格納庫で拘束されてしまう。そしてそこに、乃木が姿を現す。黒須に「先輩」と呼ばれた乃木もまた、別班だったのだ。自白剤を打たれた山本は、誤送金に関わったGFL社社長のアリ(山中崇)がテントの幹部で「日本担当」であること、「(テントの)リーダーの最後の標的は日本」であることを話すが、それ以上のことは知らないと言い張る。“命令”に従った乃木たちによって山本は橋の上から自殺に見せかけて”排除”され、第4話は幕を閉じた。

 視聴者が待ちに待った松阪桃李の登場から、乃木と黒須が別班であることが判明するシーンは、これまでの『VIVANT』においても屈指の見せ場となった。各キャストが演じる役柄がまったく明かされていなかったことや、これまで野崎と公安側の視点が多かったのは、この場面のためだったと言っても過言でないだろう。黒須が山本に味方のふりをして近づき、酒を飲ませて眠らせ、拘束して首に点滴のルートを取るシーンは、まるでスパイ映画だ。そしてそこに登場した乃木は、いままでの冴えない商社マンのイメージを脱ぎ捨て、まさにダークヒーローといった存在感を見せた。乃木が別人格のFに切り替わる瞬間、一瞬で完全に別人になる堺雅人の演技力には脱帽した。

 それにしてもやはり、乃木はただ者ではなかった。その能力値の高さ、1kgまでならほぼ10gの誤差で重さを量ることができるという特殊能力などから、「冴えない商社マン」はただの演技ではないかと初回から指摘していたが、その見立て通りだったようだ。ということは、乃木が誤送金事件の調査のために単独でバルカで動いていたときには、すでに公安が動いていることも察知していたと考えられる。野崎は乃木を怪しみ、宿泊しているホテルの盗聴をしていたが、そのホテルのシーンでは乃木とFが同時に壁を見る意味深な場面があったからだ。そしてザイール(Erkhembayar Ganbold)の自爆テロに巻き込まれそうになった際、あえて自ら行動を起こさずに別班の顔を隠していたのも、野崎が現場に潜んでいることに気づいていたからではないか。となると、乃木は初回から公安の野崎を利用し続けていたという構図になる。そんな野崎も、「冴えない商社マン」の乃木に協力しながら、常に疑いの目を向けていた。さすがに今度こそは乃木の正体に気づくだろう。今後、乃木と野崎の関係性がどうなっていくのか、気になるところだ。