元殺し屋の麻織(諏訪太朗)は業務中の怪我で引退し、協会からの支援を受けて細々と暮らしていました。しかし、協会のそうした支援政策は表向きなもので、支援金はそうそうに打ち切ることが決まり、麻織も粛清対象となったのです。監査の仕事に就き、日野とコンビを組むことで、まひろは協会の裏事情を知ることになります。

 コミュ障のまひろは、高校時代からの親友でもあるちさと以外とはうまく会話することができなかったのですが、一匹狼タイプの日野とは似たもの同士とあって、意外と打ち解けています。仕事終わりに、まひろから「上野でモツ焼きでも」と飲みに誘うなど、以前は考えられなかったことです。

 まひろは協会のマネージャーである須佐野(飛永翼)から「日野が同僚を殺したことを確認した上で、粛清してください」という指示を受けています。まひろが日野を飲みに誘ったのは、日野を酔わせて、後輩殺しの事実を聞き出すという目的があったわけです。まひろもずいぶんと大人になったことが分かります。

阪元監督自身が打ち壊す『ベビわる』の基本設定

 これまでのちさと&まひろは、高校時代から殺し屋業を始め、アルバイト感覚で次々とターゲットを仕留めてきたわけです。『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023年)では戦いを通じて分かり合えた神村兄弟を抹消、現在公開中の『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』でも標的をクールにあの世に送っています。それが『ベビわる』の世界でした。

 しかし、全12話で構成されたテレビシリーズ『ベビエブ』で、ちさまひに大きな変化が生じました。ちさともまひろも、殺人ターゲットに対して個人的な感情を抱き、協会がくだす命令に疑問を感じるようになっていきます。しかも、ジョブローテーション編に入ってからはコンビを組まずに、それぞれ1人で悩み、その問題にどう対処するかを懸命に模索します。

 今夜放送の第11話では、ちさとは血まみれ状態になります。セクハラ体質の営業部全体を、ちさとは敵に回すことになるようです。営業部に銃口を向けるということは、殺し屋協会そのものに対しても反旗を翻すことにもなるはずです。『ベビわる』の基本設定を、阪元監督自身が打ち壊す驚きのクライマックスとなりそうです。