「分散」の仕方はさまざま

分散投資といっても、分散の仕方はさまざまだ。株と債券といった「商品別」の分散、投資する時期やリターンのタイミングをずらす「時間別」分散もあれば、は先進国と新興国というように投資先の「国別」や「地域別」の分散も広く行われている。

いずれにしても肝心なのは、その組み合わせが“異色”なことだ。ある「市場変動要因(変数)」に対して同じように反応してしまうものどうしは分散投資には向いていない。同じ反応をするということは単純にリスク(ならびにリターン)が“増幅”されるだけだからだ。

逆にある変数に異なる反応を示すものを保有していれば、理論上はどのような状況下でもリスクを低減することが可能である。実際はそう単純ではないが、分散投資はこのような考え方の上に成り立つ。

例えばモーニングスター社長の朝倉智也氏は『ものぐさ投資術』(PHPビジネス)で、国内・海外の株・債券の投資信託に分散して投資する手法を紹介している。

複数の「投資信託」商品に投資するものであるが、数ある金融商品の中から投資信託を選択する理由は、それ自体が分散に適した商品だからだというのだ。

たとえば10万円を元手に資産運用を始めるとする。個別の株式に投資しようとすれば限られた銘柄数での運用になり、十分に分散投資のメリットを享受することは困難だが、投資信託であれば500円から始められるものもある。投信は複数の銘柄を組み入れてプロが運用する商品なので、一つ購入するだけで同時に複数の銘柄に投資しているのと同じ分散効果が得られる。

次に、多くの投資信託商品の中から実際に投資する商品を選択する際の評価項目としては「コスト」と「安定性」が挙げられる。投信はプロに運用を任せるものであり、自分自身で運用するのに比べて「信託報酬」などのコストが余計にかかってしまう。その額は商品ごとにさまざまで、中には購入時の手数料である「販売手数料」が無料の「ノーロード」と呼ばれる商品も存在する。ほんの数パーセントの違いでも、長期運用をしていればそのコストの差が運用成績に与える影響は無視できるものではない。なるべく低コストの商品を検討するのは言うまでもない。

加えて運用成績(リターン)の安定性という観点からも投資先を選びたい。投信には大きく「インデックスファンド」と「アクティブファンド」というものがあるが、両者の違いはインデックス型が東証株価指数(TOPIX)などの指数に連動する形で運用するのに対し、アクティブ型はその指数を上回る成績を目指すものという点である。

期待するリターンが高くなればリスクも大きくなる。インデックス型とアクティブ型を比べれば、一般にインデックス型のほうがローリスク、アクティブ型のほうがハイリスクといえるだろう。資産運用の初心者なら、コストが相対的に低くリターンも安定しているということからインデックス型が始めやすいだろう。

投資先の選定も大事なことではあるが、それよりも時間をかけて検討しなければならないのは「どの商品にどれだけのお金を配分するか」ということ。資産運用において、その成績を左右するのは「資産配分」ともいわれる。

一例をあげると先述の書籍ではスタンダードタイプとして、「国内株式10%」「先進国株式30%」「新興国株式10%」「先進国債券30%」「新興国債券20%」というポートフォリオを紹介している。これらの数字を一つの目安に、個々人の目標リターンにあった現実的な資産配分を検討する必要があるだろう。

どの商品にどれだけの資産を配分するか、というところをしっかり落とし込み、最低でも年一回の「メンテナンス」を怠らなければアクティブファンドを上回るリターンも十分可能と著者は説く。資産運用のはじめの一歩として検討に値する手法であろう。