福岡のRKB毎日放送に勤める寺井到監督の劇場デビュー作『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ~ロックと家族の絆~』は、あのとき感じた異質さの正体を解き明かしてくれる。シーナは2015年2月に亡くなり、シーナ亡き後もバンド活動を続けていた鮎川も2023年1月に永眠に就く。でも、2人が残した音楽と言葉の数々が、本作にはきっちりと記録されている。
「ロックするってことは、着る服も、生活も、食べるものも、全部含まれる」
シーナはそう語る。3人の娘を育て上げたシーナにとっては、音楽活動だけでなく、育児も家事も、生活のすべてがロックだった。
2014年に子宮頸がんであることを告知された際のシーナの言葉には、滂沱せずにはいられない。
「マコちゃんをお守りするのが、私の役割なのに……」
自分の体よりも、理想のロックを追い求める夫・鮎川誠のことを心配するシーナだった。彼女にとっては、鮎川誠を愛することが最高のロックだった。
シーナ&ロケッツに感じた異質さの正体は、あまりにも純粋な愛だった。
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