ケイトがあなたの監督作品に出演するのは初めてだと認識していますが、これまでにも彼女とは交流がありましたか。彼女と映画を作ってみていかがでしたか。
キュアロン:何度かケイトと映画祭で遭遇して、軽く会話をする機会はあったから、「いつか一緒にすばらしい作品を作りたいね」とは話していたんだ。ようやくそれが実現したよ。僕の親友であるギレルモ・デル・トロやアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(※)は先に彼女と映画を撮っていて、ジェラシーを感じていたんだ(笑)
※両名ともに、キュアロンと同じメキシコ出身の映画監督。デル・トロは『ナイトメア・アリー』『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』で、イニャリトゥは『バベル』でケイト・ブランシェットを起用している。
キュアロン:ケイトとはとても緊密な関係を築きながら仕事をできたよ。ケイトは俳優であるだけでなく、プロデューサーとしてもすばらしい才能を持っている。今作においても、全体を通してさまざまなプロセスにかかわってくれたよ。脚本を修正するのにも深く貢献してくれたし、キャスト選びも手伝ってくれたし、ほかの俳優たちのことを丁重に扱ってくれた。ケイト自身が演じるキャラクターづくりに寄与してくれたのはもちろん、最終的にどこをカットするかという段階においても彼女の役目は大きかったんだ。
ケイトといえば『キャロル』『TAR』などで“強く気高い人物に見えて、実は弱さや秘密を抱えているキャラクター”を演じてきた俳優であり、そういったキャラクターがよく似合う女優だと思います。今作のキャサリンにもある程度それは共通するように感じたのですが、ケイトの過去の出演作の中に、キュアロン監督が今回の起用を望んだ決め手のような作品はあるのでしょうか。
キュアロン:たぶん、“全作品”といえるよ。ケイトはさまざまな役を演じてきたけど、彼女は何を演じる時も、望むように演じこなしてきた。『マニフェスト』(17年)ではひとつの作品で13役を演じたし、『アイム・ノット・ゼア』(07年)ではボブ・ディランさえも演じてみせた。本当に彼女は何だって演じられるんだよ!