警察としての対応のあり方などが盛り込まれたセクション2では、「未確認異常現象は、その現象が及ぼす力と起源が不明なため、国家の安全保障に対する明らかな脅威になっている」との政府機関の考え方を紹介した。

 そのうえで「これらの現象や物体が外国の政府や団体によるものの可能性もあり、(米国の)機密データを収集し、攻撃を仕掛けてくる可能性もあると一部の政府機関は推測している」と指摘し、中国やロシアなどによる軍事・偵察活動であることも念頭に置かねばならないことに言及している。

 そして「これまで未確認異常現象によって民間人に危害が加わったことは報告されていないが、その脅威の度合いは不明であることから、未確認異常現象の傾向を把握することは警察組織のためになることだ」として、情報取集の重要性を現場に伝えるよう促している。

 また、警察組織内に共通の情報収集システムなどはなく、どのようなシステムが必要かどうか、まだ結論がでていないと現状について記している。

 手引書は、具体的な行動指針を定めるのではなく、政府機関や連邦議会、軍の取り組みを列挙することで、現場警察官の未確認異常現象への関心を高めることが狙いだ。

 未確認異常現象については、軍などの中ではタブー視されていた。特に空軍のエリート戦闘機パイロットは、訓練中などに正体不明の物体を目撃しても、上官などに報告することはしなかった。

 「UFOを見た」などと報告すれば、「どうかしてしまった」と軍内で扱われ、エリートパイロットとしての仕事をなくしてしまう恐れがあったからだ。

 ところが、未確認異常現象や物体の中には、中国やロシアが開発した兵器が含まれている可能性があった。

 戦闘機のパイロットが目撃したことを軍に報告しなければ、米軍内での分析も行われないため、中国やロシアにとっては「やりたい放題」となる。

 こうした状況に気づいた米軍は、2015年に大きな軌道修正に踏み切った。これまでに正体がわからない物体や現象があったことを認め、未確認異常現象を積極的に報告するよう軍内に呼びかけた。同時に現象や物体についての分析をして、現象などの特定を進めている。