ブレイクする前のトム・クルーズは、チラシ広告に出てくる外国人モデルのような垢抜けないハンサム感がありましたが、『トップガン』が世界的な大ヒット作になったことで、洗練されたハリウッドスターとしての風格を漂わせるようになっていきます。成功体験は、人間を大きく変えていきます。
ビーチシーンに人気爆発
トニー・スコット監督が撮った『トップガン』の内容を、サクッとおさらいしておきます。海軍パイロットのマーヴェリック(トム・クルーズ)は腕はいいものの、無茶ばかりやる問題児です。海軍の優れたパイロットのみを集めて特訓するエリート養成機関「トップガン」に、相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)と参加し、エースパイロットの座をめぐりアイスマン(ヴァル・キルマー)らと火花を散らします。
基地に着いて早々、バーへ繰り出したマーヴェリックは金髪美女のシャーロット(ケリー・マクギリス)をナンパしますが、小僧扱いされることに。翌朝、航空物理学の新任教官としてマーヴェリックたちの前に現れたのは、そのシャーロット。「漫画かよ!」と思わずツッコミたくなるようなベタな展開です。ケニー・ロギンスが歌う主題歌「デンジャーゾーン」、ベルリンのヒット曲「愛は吐息のように」が流れる合間に、とても分かりやすいライトな物語が進んでいきます。
マーヴェリックのライバルとなるアイスマンを演じたのは、ジュリアード音楽院演劇科卒業生というエリート俳優のヴァル・キルマー。トムやヴァル・キルマーが上半身裸でビーチバレーを楽しむシーンは、マッチョ好きな人たちを大変喜ばせたそうです。グースの奥さん役をメグ・ライアンが演じているのも、80年代を知る世代には懐かしいのではないでしょうか。
マーヴェリックの「無茶をやるけど、憎めない笑顔の持ち主」というキャラクターは、そのままトム・クルーズ自身のパブリックイメージとなっていきます。『トップガン』という作品との出会いが、トム・クルーズの運命を大きく変えたといっても過言ではありません。