日本人女性と2年前に結婚式!
日本に来ていただき、ありがとうございます。日本に来るのは何回目でしょうか。
マイケル・プルス(以下、プルス):えっと、何回かな…たぶん25回以上は来てるよ!だって僕の妻は神奈川県出身の日本人だからね!そういうわけで僕は何度も日本には来ているし、それ以外にも、何度か日本で映画を作る機会もあったんだ。ニコラス・ホルトとクリステン・スチュワートが主演したA24の『ロスト・エモーション』(原題:Equals)や、アリシア・ヴィキャンデルが主演のNetflix映画『アースクエイクバード』などの撮影で日本を訪れたよ。
2作とも拝見しました!では、何度も来ている日本で特にプルスさんの思い出に残っていることは何でしょうか。
プルス:2年前に結婚式を日本の湯島天神で挙げたんだよ!日本での思い出はたくさんあるけど、一番の思い出はやっぱりこの結婚式だね!(と幸せそうな結婚写真をスマートフォンで見せてくれた。)
プルス:北海道も大好き。何度か札幌で良い時間を過ごしたよ。もちろん東京も、あと南日本も好きだよ!福岡とか、鹿児島とかね。広島では平和記念資料館を訪れて、とても心が揺さぶられたな…。全然詳しいわけじゃないんだけど、日本の建築物も好きなんだ。来るたびに新しい発見をさせられ、すばらしいパワーを感じさせられる日本の文化やお国柄が大好きだよ。日本の映画は僕の人生に大きな影響を与えているし、日本に来ると他の国では感じられない「帰ってきた」みたいな感覚を得られるんだ。いつか永住パスポートを獲得したいけど、難しそうかな(笑)
プルスさん、鹿児島県に行ったことがない私よりも日本各地をご存知かも知れませんね…(笑) さて、『グラディエーター』は映画史に残るレジェンド映画のひとつですね。そんな映画の待望の続編に関わることになった気分はいかがでしたか。
プルス:とんでもない栄誉だよ。リドリー・スコットとは10年以上一緒に仕事をしてきて良い仲間になれたけど、今作はこれまででも最大級の作品かつ最も挑戦的な作品であり、25年くらい前にリドリーが作り上げた世界、古代ローマやコロセウムに立ち返るすばらしい機会でもあった。ダグラス・ウィック、ルーシー・フィッシャーやプロデューシングチームの面々とともに、壮大で歴史を感じさせる偉大なる1作目にリスペクトを払いながら、2024年ならではの作品を完成させられたことを誇りに思う。
監督や、キャスティングについて
リドリー・スコット監督とは最近『ナポレオン』や『エイリアン:ロムルス』でも一緒に仕事をしていますね。あなたから見たリドリーはどのような監督ですか。
プルス:彼はただただ、“ザ・ベスト”だよ。彼の手腕はすばらしい知恵・経験・芸術センスに裏づけられている。映画監督になる前に、3000本以上ものCMを手がけてきた人だから、彼はカメラを使いこなしたり、興味深い撮影構図を考えたりするためのテクニックや知識がずば抜けているし、洞察力にも長けているんだ。正直、映画作りはまっすぐな一本道を進むような簡単な作業ではないけど、プロデューサーとして偉大な監督リドリー・スコットとすばらしい関係を築けて、率直な意見を交換し合いながら作品に携われていることは僕にとって何にも勝る特権だよ。
前作で印象的だったラッセル・クロウやホアキン・フェニックスのキャラクターがいない状態で始まる続編ですが、制作の最初の段階で今作の一番の魅力はどのようなところにしようと考えたのでしょうか。
プルス:いい質問だね!前作でマキシマス(クロウ)とコモドゥス(フェニックス)が命を落とし、ローマは新たな時代に突入した。続編をどう作っていくか話し合う中で、僕らはローマの崩壊した秩序を描き出す方針を気に入ったんだ。今作のローマは前作に比べても本当にめちゃくちゃで、政治も権力も腐敗しきっているよね。そんななか、マキシマスの息子であるルシアスを物語の中心に据えた物語がいいと思った。
プルス:ルシアスはルッシラによって隔離され、見知らぬ世界でアイデンティティを探すことになる。本当に悲劇的な始まり方だよね。1作目ではマキシマスが最初から軍隊の実力者として知られていたから比較的ストレートな物語だったと思うけど、ルシアスは母から切り離され、妻を失い、また慣れ親しんだ居場所を失い、父も亡くなっている中で、自分のアイデンティティを見失いそうになりながら復讐に燃えることになるんだ。政治腐敗や権力と戦いながら、主人公のアイデンティティをより流動的に描く作品になったと思う。1作目にも魅了されたけど、今回はより広がりのある物語を目指したよ。
これまでのポール・メスカルは、「ノーマル・ピープル」や『aftersun/アフターサン』など、比較的繊細でもろい人間を演じることが多かった印象なのですが、彼を英雄的なグラディエーター役に起用しようと考えたのはなぜでしょうか。
プルス:キャスティングは最も苦労した部分のひとつだよ。偉大なるラッセル・クロウから主人公を受け継ぐというすごい期待に応えなきゃならないからね。まずリドリーが「ノーマル・ピープル」を見て、僕やプロデューサーたち、ケイト・ローズ・ジェームズ(キャスティング・ディレクター)と話したんだ。肉体面の力強さは後からどうとでもなるものだけど、繊細でもろい感情の表現については教えて簡単に身に付くものではないよね。その点ポールは『aftersun/アフターサン』『異人たち』の繊細な演技を見てもわかるとおり、すばらしい技術を備えた俳優だよ。彼なら弱くて脆い人間性も、力強い怒りも、カリスマ性も勇敢さも表現してくれると思った。顔立ちだってローマ人顔で役にぴったりだしね。柔軟性と剛健さを兼ね備えた表現力を持つポールだからこそ、ルシアス役に適役だったんだ。