粗い芸をそのまま見せる。洗練されていないわけだから、当然、使えない部分も多くある。だが、スルメは50分カメラ回しておけば、数分は「腹がちぎれるほど」面白いことをやるに違いない。
普通に考えれば、事前に50分のネタ見せを行い、スタッフ側で使えそうなネタをチョイスして放送分だけの収録を行いそうなものだ。だが、『あらびき団』は効率よりも、スタジオで起こるミラクルを信じている。それは、スルメが築いてきた信頼と実績の証でもある。
『あらびき団』で名を挙げたハリウッドザコシショウが語っていたことがある。
「あらびき団で売れても、ほかの番組では使ってもらえない」
スルメに関しては、当たりだろう。数分のネタを放送するために50分の収録時間を使う番組など、ほかにあるはずもない。『あらびき団』だけで圧倒的に輝く。そんな芸人が1人くらいいてもいい。
この日のラジオでは、同じ宝塚出身のスルメの父親と東野の父親が知り合いだったという小さなミラクルも明かされていたが、それはまた別の話である。
(文=新越谷ノリヲ)