そんないかがわしい職場にもかかわらず、天使のような純真キャラのちさとは、懸命に順応しようと努めます。しかし、「お元気さま~」と口にするたびに、ちさとは逆に精気を失っているように感じます。組織への順応=洗脳ではないでしょうか。

 新しい職場に溶け込もうとして自分をすり減らしていくちさとを見て、どこかで見た光景だなと感じた人もいるはずです。孤軍奮闘するちさとは、実社会に出て初めての職場で働き始めた自分自身の姿だと思います。新人だから仕事ができないのは当然なのですが、先輩社員は自分の新人時代を忘れてシビアに接します。

 一見すると優しそうな先輩社員の栗原(小島藤子)ですが、ちさとが電話でのセールスに失敗すると、「すみません、すみません」と謝るちさとに拳銃を突きつけます。

「普段から謝罪を使い慣れちゃうと、本当に謝りたいときに効果なくなるから~」

 笑顔を浮かべながら、謝るちさとに拳銃を突きつける怖い先輩です。数千万円単位の契約が飛び交う特殊な職場のパワハラは、尋常ではありません。

 ちさとは第7話で実家の両親から「あまり危ないことはしないでよ」と釘を刺され、人情派の山下部長からは「親に孫を見せるのが、いちばんの親孝行だ」と諭されています。優しい言葉が、ちさとを余計に追い詰めていくことになります。

死亡フラグか、ミスリードか?

 一方のまひろも、「おつかれさま~」どころか、生きるか死ぬかギリギリの状態です。監査部の日野(柄本時生)のもとで働き始めたまひろは、命がいくつあっても足りません。ミスを犯した殺し屋たちを、粛清するという危険な任務です。しかも、今までまひろをサポートしてくれていたちさとはおらず、日野はまったく信用できないため、ひとりで粛々と業務を行うしかありません。まひろのローンバトルが続きます。

 何度も死にそうな目に遭うまひろに対し、日野は「やめたくなった?」と冷たく尋ねるだけです。監査部にいたから、日野はこんなに冷たい性格になったのでしょうか。それとも、もともとの性格なのでしょうか。多分、答えはその両方でしょう。