やがて北川は退職し、弁護士に転身したが、検察への大きな影響力を持ち続けていた。

 あまりに無反省な北川の態度に、彼女は告発を決意したという。

 さらに、彼女が訴えたのは、事件の発端となった宴席に同席した女性副検事が、内偵捜査の段階で北川被告側に捜査情報を漏洩して、不利な供述をさせないよう尽力していたという疑惑だった。

 この会見で被害女性は、

「(女性副検事は)検察庁職員やOBに対して、被害者が私であることを言った上で、事件当時、性交に同意していたと思う、PTSDの症状も詐病ではないか、金目当ての虚偽告訴ではないかという趣旨の、私を侮辱し、誹謗中傷する虚偽の内容を故意に吹聴していたことが分かりました。さらにうそは検察庁内に広く伝わり、私が信頼していた上級庁の検事までもが、証拠関係も知らないのに、被害者を誹謗中傷し、被告人を庇(かば)うような発言をしていた」

 被害女性は、女性副検事を名誉毀損で10月1日に刑事告発したという。

 実際に裁判を傍聴して会見の様子も取材したライターの小川たまかは、

「性被害者が、周囲からのセカンドレイプに傷つけられることは多々ありますが、この件が異様なのは、その加害者が性犯罪に詳しいはずの副検事だったこと。下手をすれば、北川被告は不起訴になっていたかもしれないだけに看過できません」

 元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝はこう話す。

「北川被告は最低でも懲役5年の実刑は免れないでしょう。関西エリアの検察はかなり特殊で、昔から検察庁内で“大阪人事”“関西人事”などと呼ばれ、大阪の幹部たちが人事を決めていました。若い検事たちからすれば、検事正は面と向かって話もできないようなレベルの高い役職に感じられるかもしれません。被告自身、心の中では大阪地検のトップの検事正である俺が言っている以上、被害者も表に出さないだろうというおごりがあった可能性はあると思います」

 検察の闇は永田町の政治屋たちと同様、暗くて深い。