欧州の金融史上、類を見ない変化が起きている
――日本の銀行にはない商品やサービスはありますか?
日本の銀行(邦銀)では購入できない金融商品を多々扱っています。
外貨建て債券(国債や社債)のうち、オーストラリアドル建ての債券などは、日本に居住する投資家では購入できない商品が多いんです。
ユーロやポンド、ポーランドズロチスタート型の為替リンク預金などの仕組み預金は日本では数が少ない商品です。
――いま欧州の金融業界でのトピックは何でしょうか?
1月に始まった「第2次金融商品市場指令(MiFID2、ミーフィッドトゥー)」ですね。欧州の金融史上、最も高価な制度といわれている、大きな変革が起きています。要は社員のトレーニングや社内のソフトウェア導入など大きなコストのかかる改革が求められているわけです。
欧州でも以前は、高齢者しかいない世帯にチャイムを鳴らして訪問して、詳細に理解したわけでもない金融商品を買わせちゃうようなセールスもいたんですね。そういう被害が生じないようにしましょう、というものです。
もともと「金融商品市場指令(MiFID)」が2007年11月に施行され、これを改正したものが1月3日に施行されました。内容としては、市場の透明性を向上させる、アルゴリズム取引を規制する、デリバティブ市場に対する監督権限の強化などいろいろありますが、私の業務に大きな影響を与えているのは投資家保護の強化の面です。
――EU版の金融商品取引法のようなものでしょうか。具体的にはどう変わったのでしょうか。
それこそ昔は誰にでも売れていた商品が売れなくなっていますね。たとえば複雑な債券商品でも、昔は一般のお金持ちにも売れていたのですが、一定の商品については一般の投資家には売ってはいけない、となりました。
――法人なら買えるということでしょうか?
法人レベルや、もしくは一定以上の金融商品に関する知識や経験があることを証明した方にしか売れないといった感じです。
ほかにも商品をご提案するときに、購入前に事前に細分化した見積もりを送って確認してもらう義務が生じています。手数料の内容なども細かく明示しなければいけません。
われわれはお客様との間で信頼関係を築いていますから、お客様の中には「あなたに任せる」と一任してくださっている方もいらっしゃるんですね。そういう方でも、こうした確認作業をはさまなければいけなくなりました。それこそ以前は5分の電話で済んでいたことが、ファックスを送って確認してもらって……といった作業が必要になって1時間かかるようになったイメージです。
――そんなに大変になったとは。ファックスも日常的に使われるんですね。
富裕層のお客様は皆さん、個人情報の流出を懸念されていて、メールは怖いのでファックスがいいとおっしゃる方もいらっしゃいますね。ファックスをお送りして、届いたことを確認するために電話する、ということもやっているので、どうしても時間がかかってしまいます。